集団的自衛権行使「不可」が過半数

毎日新聞の憲法世論調査。

自衛隊の海外活動については、「場合によっては、武力行使も認める」はわずか11%。「集団的自衛権」についても「行使できないままでよい」が51%と過半数をしめた。

憲法改正:9条見直し「柔軟に」 毎日世論調査(毎日新聞 5/3)

9条については、、「何らかの9条改正」が必要が59%という結果になっているが、これは、設問を「一切、改めるべきでない」と「何らかの改正が必要」としたためであることは明らか。改正反対が「一切、?すべきでない」という厳格な規定にたいし、改正賛成が「何らかの?が必要」という柔軟な規定になっている。こういう設問の場合、厳格な規定の方が回答が少なくなるのは、世論調査の一般的傾向。

事実、「今の憲法を改める方がよいと思いますか」の設問に、「改める方がよい」と回答した人のうち、「自衛隊の活動と憲法9条にかい離がある」という理由をあげた人は9%しかない(全体にたいする割合は5%未満)。そういう人たちに、あえて「9条について、何らかの改正が必要だと思いますか」と聞けば、「まあ、なんか必要かなあ」と答える人が多数になるのは、分かりやすい理屈。

また、この間、いろんな世論調査で「戦力不保持を明確にするための改正を」という意見が、改正賛成の一定割合を占めていることが明らかになっているが、毎日新聞の調査では、そういう意見も「何らかの改正が必要だ」に含まれてしまう。

9条についての国民意識を掘り下げてみたいという問題意識は分かるが、みずからの術中にはまった、といったところです。

憲法改正:9条見直し「柔軟に」 毎日世論調査
[毎日新聞 2007年5月2日 21時51分 (最終更新時間 5月2日 23時00分)]

 憲法施行60年の節目を、私たちは戦後初めて改憲を現実の目標に掲げる安倍政権と共に迎えた。安倍晋三首相は「持っているが行使できない」とされてきた集団的自衛権の9条解釈見直しにも前向きだ。憲法改正に賛成する世論は、必ずしも9条改正を主な理由とはしていない。しかし、現実の改憲問題は、結局「9条をどうするか」が焦点となる。毎日新聞は世論調査で、国民の抑制的な9条意識を掘り下げようと試みた。その結果、「何らかの9条改正」を容認する人は59%で、そのうち最も多かったのは「新たな条項を付け加えるべきだ」の47%だった。調査結果を分析する。【須藤孝、高山祐、小山由宇】

◇「何らかの改正を」59% 「新条項付加」が多数

 世論調査に表れた国民の憲法意識は近年「憲法改正は賛成が多く、9条改正には反対が多い」傾向が続いている。最近のマスコミ各社の調査も、9条改正についての回答を賛否に大きく二分すると、▽朝日新聞(4月14、15日)賛成33%、反対49%▽NHK(4月6、7、8日)賛成25%、反対44%▽読売新聞(3月17、18日)賛成35.7%、反対55.8%――などとなっている。世論は9条に触ることにはなお慎重だ。
 そこで、毎日新聞は憲法そのものや国民投票法案の賛否を聞いた後、9条改正について回答の選択肢から「分からない」を外した2択方式で聞いた。質問の仕方も「一切改めるべきでない」「何らかの改正が必要だ」と、どちらかに振り分けることを意識して尋ねた。すると、反対派は28%で、容認派が59%という結果が出た。
 05年9月にも「9条を変えるべきか」を2択方式で聞いた時は、▽「変えるべきだ」30%▽「変えるべきでない」62%だった。この間、北朝鮮のミサイル連射や核実験といった安全保障上の大きな脅威が目の前に突きつけられたことが変化に影響したのかもしれない。
 そのうえで「何らかの9条改正が必要」と答えた人たちに、具体的にどのような改正が望ましいかを聞いたところ、半数近くは「新条項の付加」を選んだ。「9条1項(戦争放棄)だけ改める」5%▽「9条2項(戦力の不保持)だけ改める」22%▽「1項、2項とも改める」23%。2項改正を求める人を合わせると45%に達するとはいえ、1項、2項に新条項を加えるとする人には及ばない。
 現在の憲法論議では、自衛隊の国際平和協力活動について15年の実績を踏まえ、9条に別の条項を追加して明記し、今後も積極的な役割を務める代わりに、戦後1項、2項が果たしてきた「歯止め」の役割は堅持するという考え方がある。公明党の「加憲」が代表例だ。「新条項付加」の世論にはこうした議論も影響しているとみられ、国際情勢の変化に何らかの対応が必要と感じながらも、現在の条項を変えることへのためらいもうかがえる。
 この見方を裏付けるように、「9条改正が必要」と答えた人でも、自衛隊の海外での活動については「停戦後のPKO(国連平和維持活動)まで」とした人の割合が45%と最も多かった。現在の政府解釈で憲法改正は必要ないとされる活動だ。9条改正論はあくまで「必要最小限」の控えめな現実対応を求めている。

◇改憲派が首相支持 不支持の2倍、構図はっきり

 憲法改正に賛成と答えた人のうち、安倍内閣を支持していると回答した人の割合(52%)は支持しない人の割合(27%)の2倍近い。逆に改正反対の人のうち、安倍内閣を支持する人の割合(29%)は支持しない人の割合(59%)の約半数にとどまった。改憲派が安倍内閣を支持している構図がはっきり出た。
 4月の調査では安倍内閣の支持率が上昇し、支持する理由は3月の調査より指導力や政策への期待が増えた。安倍晋三首相が「憲法改正を目指す」と繰り返したり、集団的自衛権の行使検討を始めたことも、支持率増に結びついている可能性がある。
 憲法は政治の争点になると、対決の構図がとりわけ険しくなるようだ。改憲手続きを定める国民投票法案の与党と民主党の共同修正が、壊れたのもそのためだった。

◇参院選の材料「する」は69%

 7月の参院選で、各党や候補者の憲法についての考え方を投票の判断材料にするか尋ねたところ、「する」と答えた人が69%で「しない」の17%を大幅に上回った。
 安倍首相が参院選の公約に改憲を掲げる意向を示していることが影響しているとみられる。憲法を選挙の争点にすることには、野党だけでなく自民党内からも批判があるが、世論は安倍首相の意欲を受け止めているとも読み取れる。
 「判断材料にする」と答えた人は、支持政党別でも▽自民=71%▽民主=81%▽公明=58%▽共産=79%▽社民=77%▽国民新=64%▽無党派層=68%――と満遍なく広がっており、改憲派・護憲派の別なく関心は高い。

◇集団的自衛権 「可能」34%、「不可」51%

 集団的自衛権を「行使できるようにすべきだ」と答えた人は34%、「行使できないままでよい」とした人は51%だった。同じ質問をした小泉純一郎前政権時の世論調査(01年9月、面接)では、行使容認派が25%、行使否定派は66%だった。
 直後に起きた「9.11テロ」で実施した緊急世論調査(同、平日・電話)で、行使容認派が41%へ一時的に跳ね上がったことがあるが、平時で比べれば、5年半の間に容認と否定の差は41ポイントから17ポイントへ大きく縮まった。北朝鮮の核・ミサイルの脅威や首相の集団的自衛権見直し提起などで関心が高まっているためとみられる。
 支持政党別でみると、自民支持層は「行使すべきだ」と「行使しない」は共に44%。公明支持層は「行使しない」が59%で、「行使すべきだ」の28%を大きく上回った。与党内でも見直しには反対が多いことになり、首相主導の見直し論議は慎重さが求められる。
 憲法9条について「何らかの改正が必要だ」と答えた人のうち、行使容認は49%で、反対の46%とほぼ同数。9条改正派でも、必ずしも集団的自衛権の行使容認にはこだわっていないようだ。
 今後の自衛隊の活動については、▽「停戦後の国連平和維持活動(PKO)まで認める」47%▽「紛争中の国での復興支援も認める」22%▽「武力行使も認める」11%▽「すべきでない」7%――の順。政府は今国会にイラク復興特別措置法を2年間延長する改正案を提出しているが、「紛争中の国」への自衛隊派遣に世論は依然慎重だ。

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

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