空白の16分間

イージス艦衝突事故の続報。

石破防衛大臣は、自分のところに一報が伝わるのが遅かったと憤ってみせているが、むしろ問題は、衝突から海上保安庁への連絡までに16分かかっていること。

一方で、一緒に出漁していた漁民の方々。最新鋭の艦船がなぜ漁船を見逃したか、その憤りは当然である。

防衛省また激震 野党、責任追及の構え イージス艦衝突(朝日新聞)
「漁船見えたはず」僚船乗組員ら怒りの証言(読売新聞)
イージス艦、正面から直進=自分の船はかじ切り回避?同僚船長ら証言?千葉・勝浦(時事通信)
漁協関係者、事故当時の様子を語る(TBS News-i)
イージス艦に回避義務の疑い=海保が強制捜査、艦長ら聴取へ?漁師父子、依然不明(時事通信)

海上自衛隊は、いまのところ詳しい事情を公表していない。しかし、石破防衛大臣は、自民党の会合で、衝突1分前に初めて漁船に気づき回避行動をとったと発言。ちゃんと当直が見張りをしていたのかどうか、レーダーを見逃したのではないか。疑問は尽きないが、それについては何にも答えない一方で、回避行動をとったことだけは情報として流れていく。あまりに意図的ではないだろうか。

防衛省また激震 野党、責任追及の構え イージス艦衝突
[asahi.com 2008年02月19日15時56分]

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船の衝突を受け、政府は19日、首相官邸に「情報連絡室」を設置して情報収集にあたった。福田首相は午前8時半からの閣議に先立ち、町村官房長官、石破防衛相、冬柴国交相と国会内で協議し、防衛省と海上保安庁が連携して漁船の乗組員の救助・捜索に全力をあげるよう指示した。
 協議では、石破、冬柴両氏が、漁船の乗組員捜索のため、海自が艦船5隻や航空機4機を派遣したほか、海保も巡視船や特殊救難隊を出動させたことなどを報告。首相は「防衛省と海上保安庁がよく連携して、乗組員の安否確認、救助・捜索に全力をあげるように」と指示した。防衛省は午前7時に海幕に事故調査委員会を設置。江渡聡徳副大臣を千葉県勝浦市の新勝浦市漁協川津支所に派遣した。
 町村長官は閣議後の記者会見で、「(漁船の乗組員が)無事に救出されることに全力を注ぐ、この一点に現時点では尽きる」と述べる一方、高性能のレーダーを搭載する最新鋭のイージス艦が漁船と衝突した原因については「レーダーで海上を調べている。左右に見張りもいるそうだ。(現場海域は)明け方ということもあり、まだ相当暗かった。(漁船が)見えたのかどうか、まだわからない」と語った。
 石破防衛相も同日の記者会見で「いまの時点で原因を断定できるものはない」と述べ、衆院予算委員会では「なぜこんなことが起こるのか、早急に解明しなくてはならない」と語った。

    ◇

 民主、共産、社民、国民新の野党各党は、海自艦衝突事故の原因究明と再発防止を求めるとともに、官邸や石破防衛相への連絡が遅れた問題で責任追及の構えをみせている。
 民主党は防衛省などから事情を聴くため、19日正午から外務防衛部門会議を緊急招集。鳩山由紀夫幹事長は同日午前、記者団に「大変大きな問題だ。数分以内に通知が大臣に届かなければ話にならない」と語り、政府の危機管理体制を追及する考えを示した。
 共産党の穀田恵二国会対策委員長は「関係閣僚に一刻も早く連絡するのは当然だ。対応がこれでいいのか驚きを禁じ得ない」と批判。社民党の福島党首は「中身によっては防衛相の責任を追及していく」。国民新党の亀井久興幹事長も「場合によっては防衛相の責任を問わないといけないかもしれない」と述べた。

    ◇

■事故情報の伝達経緯■

午前4時07分ごろ  「あたご」と清徳丸が千葉・野島崎沖で衝突
  4時23分    あたごが海上保安庁に事故を連絡
  5時38分    石破防衛相に秘書官から事故の一報
  5時55分    官邸に「野島崎南方における自衛艦と漁船の衝突事案に関する情報連絡室」設置
  6時00分ごろ  福田首相に秘書官から事故の連絡。首相は「漁船員の捜索に全力を尽くす」ことを指示
  6時18分    防衛省が事務次官をトップとした「連絡・対策室」設置

※政府発表や石破防衛相の国会答弁などをもとに作成

「漁船見えたはず」僚船乗組員ら怒りの証言
[2008年2月19日22時52分 読売新聞]

 世界最新鋭のイージス艦が、近くの漁船を見落とすという初歩的ミスを犯した疑いが浮上した――。千葉県房総半島沖の太平洋上で19日早朝、海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」が衝突した事故。防衛省が詳しい説明を避ける中で、清徳丸の僚船の乗組員たちは、「こっちにまっすぐ走ってきた」「イージス艦から見えないわけがない」などと事故前後の様子を生々しく証言した。
 清徳丸の親子2人の行方は依然不明で、地元の千葉県勝浦市では、家族らが帰還を祈って真冬の海に必死に手を合わせていた。
 「こっちの船がよけるんじゃないかと思っていたのか、ほとんどまっすぐ走ってきた」
 清徳丸が所属する新勝浦市漁協では、事故当時、現場海域にいた僚船のうち「金平丸(きんぺいまる)」の船長、市原義次さん(55)らが19日夕、記者会見に臨み、イージス艦の回避行動の遅れを厳しい口調で非難した。
 市原さんらによると、金平丸がイージス艦「あたご」とすれ違ったのは、同日午前4時すぎ。市原さんはコースが重なっていることに危険を感じ、回避しようとして金平丸のかじを右に切った。
 僚船の清徳丸はその直後に衝突したとみられる。市原さんは、あたごが照明をつけて停船したのも目にしたが、「自分の船を見て止まったのか」と思って、衝突が起きていたことに気づかなかったという。そのまま三宅島方面に向かって操業していたが、午前6時ごろ、無線連絡で初めて事故を知った。
 清徳丸に無線で呼びかけたが応答がなかったため、知らされた位置を確認したところ、ほぼ同艦を回避した位置だったという。
 同席した同漁協の組合長、外記栄太郎さん(80)も、「漁村始まって以来の大事件。乗組員の安否を心配している」「ミサイルを打ち落とす近代的で優秀な船が、こんな小さい船を壊して、自衛隊はたるんでいる」と怒りをあらわにした。
 同じく僚船の「康栄丸」の船長、中ノ谷義敬さん(61)は「レーダーでは半径約3.6キロ以内に、5隻ぐらい漁船が映っていた。イージス艦に(清徳丸が)見えていないわけがない」と話した。
 防衛省では海上自衛隊のトップにあたる吉川栄治海上幕僚長も午後1時すぎ、艦橋に見張り役も含め10人ほど隊員がいたことを明かし、「回避行動を取ったとは聞いている」と述べたが、「海上保安庁の捜査、海自の調査にゆだねたい」と言って、会見を切り上げた。その後、夜になっても、事故の状況の詳しい説明はほとんどなく、幹部たちは「調査中」を繰り返すばかり。
 あたごが清徳丸の存在を見落とした可能性が指摘されている点についても、幹部らは「いまは何も言えない」と一様にこわばった表情で語った。

イージス艦、正面から直進=自分の船はかじ切り回避?同僚船長ら証言?千葉・勝浦
[時事通信 2008/02/19-22:10]

 「イージス艦はまっすぐ向かってきた。向きは変わらず、自分の漁船はかじを切り回避した」。千葉県・野島崎沖のイージス艦と漁船「清徳丸」の衝突事故で、清徳丸とともに出漁した僚船の船長らは19日夕、同県勝浦市の川津港で記者会見し、洋上での状況を説明した。ただ、清徳丸が衝突した場面を目撃した漁船員はおらず、それぞれの位置関係については不明だ。

漁協関係者、事故当時の様子を語る
[TBS News-i 最終更新:2008年2月19日(火) 21時3分]

 海上自衛隊のイージス艦と漁船が衝突した事故で今も行方のわからない「清徳丸」の乗組員2人を捜索していた地元の漁協関係者が、事故当時の様子などについて語りました。
 「コースはまっすぐだと思った。このままでは衝突しちゃうな」(同じ漁場に向かっていた漁師)
 清徳丸と同じ漁場に向かっていた漁師らによりますと、事故が起きたあとの午前6時過ぎに地元の漁協から連絡を受け、無線で吉清さんを呼びましたが、応答がないため事故現場に引き返したということです。また会見では、漁協への連絡が2時間近く経っていたことなど、海上自衛隊の対応に怒りをあらわにしていました。
 地元では、およそ80隻の漁船が出て2人の捜索を行い、清徳丸の吉清治夫さんが着ていた銀色のジャンパーや積まれていた布団などを発見したということです。(19日20:33)

イージス艦に回避義務の疑い=海保が強制捜査、艦長ら聴取へ?漁師父子、依然不明
[時事通信 2008/02/19-22:24]

 千葉県・房総半島沖で、海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」(7750トン)がマグロはえ縄漁船「清徳丸」(7.3トン)と衝突し、清徳丸の父子が行方不明となった事故で、あたごが衝突1分前に漁船を認識し、全力で後進をかけて減速を試みていたことが19日、分かった。石破茂防衛相は右方向から漁船の接近を視認していたと説明し、あたご側に回避義務があった疑いが浮上した。
 横須賀海上保安部は同日、業務上過失往来危険容疑で、あたご艦内を捜索。舩渡健艦長ら乗員の事情聴取も進め、事故原因の解明を急ぐ。
 事故は、高い防衛上の機密を持つイージス艦が強制捜査を受ける異例の事態に発展した。
 第3管区海上保安本部の調べなどによると、あたごの右舷艦首付近の傷が喫水線上で広がっていた。清徳丸は繊維強化プラスチック(FRP)製。損傷状況からあたごは、清徳丸と直角に近い角度で激しく衝突したとみられている。

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

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