35年前の本ですが…

武谷三男編『原子力発電』(岩波新書)
武谷三男編『原子力発電』

こんどの事故で、初めて原発に不安を持った、原発についてもっと知らなければと思った方にも、おすすめの1冊です。

原子炉で生まれる「死の灰」(放射性廃棄物)とはどんなものか、原子力発電のしくみ、放射線被曝の影響、核燃料再処理やプルトニウム管理の難しさ、などなど、基本から1つ1つ取り上げて順々に説明されているので、読めば、原子力発電が「未完成の技術」をかかえた危険なものであることが必ず分かると思います。

35年前の本なので、この本にはスリーマイル島事故もチェルノブイリ事故も出てこないし、キュリー、ラド、レムなど旧単位が使われていたりします ((第22刷のさいに、ベクレル、グレイ、シーベルトとの対照表がつけられたので、本文中では旧単位が使われていても、安心して読むことができます。))が、中身は、こんどの福島原発事故を前に少しも古くなっていません。それは、「安全神話」にひたりきった政府の無責任な原発推進政策が、この当時から少しも変わってないからだとも言えますが、同時に、本書が、原子力発電のかかえる根本的な問題を真正面から取り上げたスタンダードだからだとも言えます。

記憶をたどってみれば、僕が原発について最初に読んだ本でした。発行は1976年(ちょうど不破さんが、原発問題で最初の国会質問をした年 ((本書の編者・武谷三男氏による「序にかえて」を読むと、不破さんがこんどの講義で「原子力の利用をめぐる二つの不幸」と指摘した中身がいっそうよく分かります。)))ですが、こんどの事件をうけて今年4月に増刷されました。

原子力発電と国民みんながしっかり向き合わなければならないいま、一人でも多くの人に読んでいただきたいと思います。

【目次】
 序にかえて
 I つきまとう死の灰
 II 原子力発電のしくみ
 III ますます厳しくなる許容量
 IV 原子力発電所の事故
 V 巨大化の問題点
 VI 日本の原子力発電は
 VII クローズド・システムは可能か
 VIII どうしても原子力か

【書誌情報】
編者:武谷三男(たけたに・みつお、故人)/書名:原子力発電(岩波新書・青版B109)/出版社:岩波書店/発行:1976年(2011年4月、第24刷)/定価:本体700円+税/ISBN4-00-411109-9

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

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