防衛「省」昇格をめぐる社説(その2)

防衛「省」昇格法案の国会提出にたいする社説の続きです。

安易すぎはしないか 防衛「省」昇格(中日新聞)

安易すぎはしないか
[中日新聞 2006/06/10]

 防衛庁の「省」昇格法案が幕切れ目前の国会に提出された。継続審議を前提とした駆け込み乗車のようなものだ。省になれば何が変わり、マイナス面はないのか。十二分の説明が欠かせない。

防衛「省」昇格

 与党は今年初め、防衛施設庁の官製談合事件で、省昇格法案の今国会提出をあきらめかけたはずだ。あの時から状況は変わらない。自民党内で必ずしも機運が高まっていたわけでもない。公明党が容認に転じたから出したというだけなら、安易すぎる。
 「平和と福祉」を掲げる公明党が従来の慎重姿勢から転じた理由も分かりにくい。いつか受け入れざるを得ないから、来年の統一地方選と参院選を前に片づけたい、秋の臨時国会で成立を、というのでは、説明になっていない。
 その臨時国会は、九月の自民党総裁選で選ばれた新総裁が政権を発足させる場だ。会期の日数を考えると法案処理に限界はある。もし来年の通常国会に持ち越されれば、審議は参院選直前だ。自らの策におぼれることになりかねない。
 法案提出にこぎつけたのには、「悲願」実現への防衛庁の執念があった。談合事件の贖罪(しょくざい)に防衛施設庁を解体し、本庁と統合する。組織が大きくなるから、省にすべきだと、事件を逆手にとった。
 防衛庁は内閣府の外局だ。長官は防衛庁という組織のトップだが、「国の防衛」の「主任の大臣」ではない。首相を通じなければ、閣議開催の要求など重要な仕事はできない。だから、省にして長官を大臣にしたいと訴えてきた。
 危機管理など迅速な対応を求められることを考えれば、理解できなくもない。だが、シビリアンコントロール(文民統制)を十分に担保することは、忘れてもらっては困る。
 法案にそれとなく盛り込まれたのが、自衛隊の海外活動を「本来任務」に格上げすることだ。
 政府は何か事態が起こると、特措法をつくって、なし崩し的に自衛隊を海外に派遣してきた。「本来任務」にすることで、自衛隊の海外派遣の流れがどんどん加速することを懸念する声は少なくない。
 自衛隊の海外活動の在り方は憲法にかかわる。時間をかけて慎重に議論する必要がある。近隣諸国の不安をぬぐう配慮も欠かせない。
 小泉純一郎首相は省昇格について「長年の懸案。なんで庁である必要があったのか。当然だと思う」と述べた。国会で法案が審議される時点ではもう首相を辞めているにしても、言葉が軽すぎはしないか。

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