毎日新聞、マルクスが売れるわけを不破さんに聞く

「毎日新聞」2009年6月26日付夕刊「特集ワイド」

本日(26日)の「毎日新聞」夕刊の特集ワイドに、日本共産党の不破さんの大きなインタビューが掲載されています。

なぜいまマルクスが売れているのか、マルクスはなぜ難しいのか、などの質問から始まって、不破さんが所長をつとめている社会科学研究所って何をするところ?  社会主義になったら共産党が天下を取るのか、などなど、何でも聞いてみようという感じです。(^^;)

取材をした記者さんがどんな方か知りませんが、「愚問ですが」と言いながら、不破さんの話を初めて聞いて、なるほどと思ったところが見出しや記事に率直に現われていると思いました。

特集ワイド:愚問ですが 今「マルクス」が売れるわけ 共産党・不破哲三さんに聞く – 毎日新聞

特集ワイド:愚問ですが 今「マルクス」が売れるわけ 共産党・不破哲三さんに聞く

[毎日新聞 2009年6月26日 東京夕刊]

 「蟹工船」の次はマルクスが見直されているらしい。労働と貧困を巡る社会の不安はいよいよ深刻だ。マルクスといえば社会主義、そして共産党だろう。「マルクスは生きている」を出版した同党付属社会科学研究所長、不破哲三さん(79)を直撃した。【遠藤拓】

◇その先、政党は不要
◇ルールなき資本主義の不合理
◇横暴と搾取を抑え一歩前へ

 ――書店では不破さんの著書をはじめ、マルクス本が人気のようです。資本主義を否定したマルクスの本が、市場をわかせるのも皮肉ですね。

 不破さん ふふふ。資本主義だから売れているんでしょう。世の中の不合理にぶつかった人たちが、資本主義の病理を分析したマルクスにひかれる。マルクスをありのままに見てもらいたいと思っていただけに、喜んでいます。

 ――マルクスの評価は時勢によっても変わります。世間は現金だと思いませんか。

 不破さん 昔からマルクスに賛成する人もいれば、「資本主義の方がいい」と言う人もいる。ソ連崩壊でも、「マルクスは死んだ」という声は盛んでした。その後、資本主義は我が世の春を謳歌(おうか)しましたが、今は非難ごうごうです。思い込みのマルクス批判には意味がありません。

 ――社会主義って陰うつなイメージがありましたが。

 不破さん 最大の罪はスターリンにあります。彼が社会主義と称してやったことは、領土を拡張する侵略主義。マルクスらがもっとも批判するところでした。だからソ連崩壊はいいことと思います。

    ■

 ――マルクスとの出合いはいつでしたか。

 不破さん 最初は1946年秋ごろ。戦時中は国禁の書でしたからね。初めて読んだのは数十ページのパンフレット。でも正直、頭に残ったモノはあまりないね(笑い)。

 ――不破さんでも? せんえつながら私、マルクスの解説本もちょっと……。なぜ、かくも難しいのでしょう。

 不破さん いくつか理由があると思うんです。例えば今サブプライムローンや麻生太郎首相といえば、たいてい知っていますね。でも、100年後の人が聞いても、分かるかどうか。マルクスを理解するにはまず、19世紀のヨーロッパを知ることです。
 また、マルクスは経済学でも哲学でも、何百年にわたる学問の体系をすべて吸収し、膨大な作業によって新たな理論を作り上げた。それも難しい理由でしょうね。

 ――愚かしい質問かもしれませんが、マルクスにもう少し物事をかみ砕く能力があれば、世界の歴史は変わったのではありませんか。

 不破さん マルクスは、インターナショナルという国際的な労働者組織では、経済学に明るくない人を相手に賃金の仕組みや資本主義のことを講演し、反対者を説得していましたよ。ただ、そればかりでは、いつまでも役に立つ理論は残せなかったでしょうね。

 ――生意気なことを言いますが、今なおマルクスが前面に出るようでは、それ以降の人々は何をしているのかと思います。彼を超える理論家は現れないのですか。

 不破さん うーん。人間の知識、認識は発展するものです。マルクスが最後の到達点ではありません。ただ、英国BBC放送が99年、「過去1000年でもっとも偉大な思想家は誰か」とのアンケートを行ったら、トップはマルクスだったと言います。マルクスが一つの世界観の土台を固めた功績は残るわけです。

 ――不破さんはマルクスがお好きなんですね。

 不破さん 私も私たちの党も、日本におけるマルクスの後継者に達したいと思っています。

    ■

 ――ところで、社会科学研究所は、何をするところですか。

 不破さん マルクスはもちろん、日本や世界のことなど、共産党の活動でぶつかる理論問題のすべてを守備範囲としています。

 ――そういえば、不破さんと衆院当選同期の小沢さん(一郎民主党代表代行)は、院政をしているとウワサされます。不破さんは?

 不破さん うちはきちんとしていますから。「院」などありません(笑い)。

 ――でも、共産党の皆さんの演説を聞くと、皆どこか似通っています。やっぱり、不破さんの影響を感じます。

 不破さん 考えすぎじゃないですか。ふふふふ。

 ――このところのマルクスや「蟹工船」の人気は、共産党への期待とも受け取れます。衆院選で躍進しますかね。

 不破さん うちの場合、「風」による楽勝は絶対にありません。最後はこじ開けなければ開かないものですね。

 ――自民党はもちろん、民主党にも厳しい態度で接していますね。今後は?

 不破さん 民主党の自民党批判は官僚批判。大企業優遇への批判がないんですよ。自民、民主両党の2大政党制といっても、根は同じところにある。その認識は、以前から変わっていません。

 ――著書では今世紀、資本主義維持の流れと社会主義を目指す流れが競合するとの見通しを示しました。

 不破さん その先にあるのは、社会主義ですよ。
 日本のようなルールなき資本主義が、ルールある経済社会に変われば、資本の横暴はヨーロッパのようにかなり抑えられるでしょう。でも、なくなるわけではありません。だから、そうした横暴や搾取がなくなるところに進みたい。それには一歩一歩の漸進が必要です。

    ■

 ――マルクスは、資本主義の危機が19世紀に起こると言ったそうですが。

 不破さん 21世紀における資本主義の矛盾は深刻です。資本主義がひき起こした究極の災害とも言える地球温暖化、そしてケインズ主義や新自由主義が破綻(はたん)したことでも明らかです。世界で完全な社会主義を実現した国はまだありませんが、21世紀はかなり勝負のつく時代でしょうね。

 ――今度はホントに?

 不破さん 完全に、とは言いませんよ。私たちは党の綱領で、21世紀は発達した資本主義国で、社会主義が問題になる時代であるとの見通しを立てました。まあ、今世紀の終わりになんと言うかは分かりませんが(笑い)。

 ――ところで、社会主義が実現したら、共産党が天下を取るんですか。

 不破さん 誤解ですよ。だって綱領では、社会主義が高度な発展を遂げれば「国家権力そのものが不必要になる」とうたっています。政治も政党もなくなる。共産党も例外ではありません。
 そして、食べるための経済活動に縛られたせせこましい社会ではなくなり、遊ぶ時間や自分の持つ能力を伸ばす時間が持てる。七色の豊かな社会になるはずです。

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◇今年出版されたマルクスの入門・解説書など(50音順)

知っておきたいマルクス「資本論」(神津朝夫著 角川学芸出版)
図解 これならわかる!マルクスと「資本論」(木暮太一監修 青春出版社)
図解 資本論(久恒啓一監修 イースト・プレス)
続・資本論 まんがで読破(バラエティアートワークス編 イースト・プレス)
誰もが読める「資本論」 起て 飢えたる者よ!(咲木英和著 新生出版)
知識ゼロからのマルクス経済学入門(弘兼憲史著 幻冬舎)
とっさのマルクス あなたを守る名言集(的場昭弘著 幻冬舎)
マルクス「資本論」入門(河出書房新社)
マルクスの逆襲(三田誠広著 集英社)
マルクスは生きている(不破哲三著 平凡社)
理論劇画 マルクス資本論(門井文雄著 かもがわ出版)

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■人物略歴
◇ふわ・てつぞう
 1930年、東京都生まれ。東京大理学部卒。日本共産党前中央委員会議長。03年に11期務めた衆院議員を引退。著書は150冊を超え「『資本論』全三部を読む」(全7冊)などマルクスに関するものも多い。

ちなみに、不破さんの『マルクスは生きている』(平凡社新書)は、発売1カ月以上たったにもかかわらず、引き続き、Amazonランキング「哲学・思想」部門で第9位、紀伊國屋書店・新書週間ベストセラー(6月15日〜21日)でも第9位と、がんばっております。(^_^)v

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