今日の紙面から

事件のニュースではありませんが、今日の新聞でいいなと思った記事をピックアップ。

◆最初は、「毎日新聞」の夕刊の2つの記事。

1つは、「キャンパる」の、ノーベル物理学賞受賞者・小柴昌俊さんのインタビュー。

小柴さんは80歳。陸軍大佐・連隊長(「小柴支隊」)にまでなった父親の後を継ぐ気で、陸軍幼年学校を受験する前の年、小児まひになり、軍人の道を断念。東京明治工業専門学校(明治工専)では勤労動員の毎日だったとか。徴兵検査で「丁種合格」になった直後に一高(現在の東大駒場)に進学しましたが、やはり、勤労動員ばかりだったそうです。そのころのことが、記事ではこんなふうに紹介されています。

 そのころには日本の劣勢を知っていた。「日本の大本営発表ってのがどんなにでたらめかってことは分かるわけ。いろんな話も一高の友達から入ってきたよ」
 そんな時代を生きて、「あの戦争は誤っていた」という思いをずっと持ってきた。

さらに戦後、日本の再軍備が始まったころ、元職業軍人の父親に誘いがかかったそうです。

 父親が相談してきた。小柴さんはこう言い切った。「戦争を通じて、日本の陸軍がどんなばかげたことをして、この日本を、国民をひどい目に遭わせたかっていうことを痛感している。またあなたが、陸軍みたいな、自衛隊の仕事をするっていうのなら、親子の縁を切ってからにしてくれ」
 それで、父親は自衛隊に入らなかった。

これは、なかなか厳しい言葉かも知れないけれど、そう言い切った小柴さんの気持ちもよく分かります。

 取材の最後に今の世の中について聞いた時、「戦争で人の殺し合いなんか、絶対にやるべきじゃない」と断言した。それまでの笑いの消えた、厳しい小柴節だった。

で、このインタビューをした学生は、こんなふうに感想を書いています。これもなかなか貴重なコメントだと思いました。

小柴さんが軍人だったお父さんを話す時、肉親としての愛情と戦争責任とが交差しているように感じた。どちらかだけではダメだと、教わった気がした。

2つめは、同じ「毎日新聞」夕刊2面の「特集ワイド」。民族学の梅棹忠夫氏のインタビュー。梅棹氏といえば、「文明の生態史観」をとなえ、史的唯物論やマルクス主義にたいする批判を展開したり、中曽根肝いりの国立民族学博物館の初代館長を務めたりした人物ですが、その梅棹氏のインタビューが「非武装の先頭走者や」という見出しで大きく取り上げられています。曰く――

 ところで、この国はどこへ行こうとしているのか、である。
 「今の日本は、かなりいい状態にあると見ていますよ。世界のトップランナーや。非武装国家でね」。……「自衛隊が名残としてあるが、軍はない。豊臣秀吉が刀狩りで農民の武装解除をしたように、国家の武装を解くことが、これからの世界の歩むべき道です。日本はその先頭に立っている。自信を持ったらええ」

そして、安倍首相の「9条は時代にそぐわない」という発言について

 「戦争の悲惨さちゅうもんをどう思うてるのや。60年もたつと、格好ええとこだけ思い出して、あとは忘れる。戦争体験を持たない人は、気をつけなあかん。怖さを知らんから。そんなばかげたことを考えてる人があったら、みんなで阻止せなならんな」

さらに、北朝鮮の核実験に対する「核保有論議」についても

 「なにをゆうてるか。核競争を始めたら、世界は破滅の道や。今は、もし外敵が来よったら、米国に排除してもらうことになっとる。せっかくそういう恵まれた状況にあるのだから、米国の傘の中に入っとったら、よろしいがな」

アメリカの「核の傘」のもとにあるから安全だという議論には僕は賛成しませんが、あの梅棹氏が憲法9条や「核保有論議」についてこんなふうに考えていたとは驚き。認識を新たにせざるをえませんでした。

◆もう1つは、日経夕刊の「十字路」欄にのった「いま、なぜ投資減税なのか」という中前国際経済研究所代表・中前忠氏のコラム。

まず中前氏は、格差拡大の最大の問題は資金の偏在であると指摘しておられます。

 格差の基本形は、企業対家計、大企業対中小企業にある。企業は富み、家計は痛んでいる。大企業の収益は絶好調だが、中小企業は不調である。格差拡大の最大の問題は資金の偏在である。投資しきれない過大収益が過剰流動性の源泉となり、資源の有効活用を妨げるからだ。

そこから、次のように、企業減税、とくに投資減税について、次のように批判を展開されています。

 この時期における企業減税、とりわけ投資減税は、格差と資金の偏在を一段と広げ、成長を抑制するリスクが極めて大きい。第一に、日本経済の問題は投資不足ではなく、投資過多である。設備投資の対国内総生産(GDP)比は15%と、欧米の10%をはるかに上回り、経常収支も大幅な黒字である。第二に、2005年度の非金融法人企業の設備投資額は38兆円だが、これは減価償却費42兆円を下回っている。第三に、大企業の雇用が全体に占めるシェアは15%程度でしかないが、設備投資では60%にもなる。対付加価値投資率は25%と、中小企業の8%をはるかに上回っている。
 投資が必要なのは中小企業である。減価償却制度の拡充による企業減税の恩恵は、中小企業よりも大企業の方が大きい。

そして、結論を次のように結んでおられます。

 格差の是正は資源配分をより効率化し、企業と家計、大企業と中小企業のバランスを取り戻し、成長の条件を整えることにつながる。それにはまず、預金金利引き上げによる家計の利子所得の復活と中小企業の振興が追求されなくてはならない。

この結論には僕は大賛成です。

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

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