財政再建するなら富裕層への増税で

ヨーロッパで、最富豪層のなかから「われわれに増税を」の声が起こっていることは前に紹介したとおりですが、イタリア政府は、財政再建に向けて富裕税の導入を決めた。当初は、50万ユーロ(約5400万円)以上の所得に3%の特別課税といわれていたが、30万ユーロ(約3240万円)以上に引き下げられたというニュースも流れている。

おもしろいのは、ベルルスコーニ政権が、いったんは富裕税の導入を断念したのだが、そのことが伝わると国債価格が急落!! 結局、市場に不信感を突きつけられる形で、政府は、富裕層への増税に踏み切らざるをえなくなったのだ。

いまや「財政再建は富裕層への増税で」が市場の声。野田さんも、それに耳を傾けてはいかが?

イタリア、財政再建へ富裕層向け課税:日本経済新聞
G7、欧州危機封じ焦点…9日から仏で開催:読売新聞
NY市場 イタリア、富裕税の課税最低限を30万ユーロに引き下げへ:Klugクルーク

富裕税はイタリアだけではない。ポルトガルも、年間利益が150万ユーロ(約1億6000万円)以上の企業に3%、富裕層には2.5%の付加税を課すことを決定した。

ポルトガル:法人税・富裕層増税の計画発表――赤字削減目標達成に向け – Bloomberg.co.jp

イタリア、財政再建へ富裕層向け課税 国債利回り上昇で方針修正

[日本経済新聞 2011/9/7 10:38]

 【ジュネーブ=藤田剛】イタリア政府は6日、富裕層への特別課税や付加価値税(VAT)の引き上げを新たな財政再建計画に盛り込むことを決めた。いったん与党などの反対を受けて計画から外したところ、市場の失望感からイタリア国債の利回りが上昇。再び軌道修正して「復活」させた。財政赤字を確実に455億ユーロ(約5兆円)減らして2013年までに財政収支を均衡させ、伊国債への市場の不安払拭を狙う。
 新しい財政再建計画は7日にも上院で承認される見通し。その後下院でも承認されれば、法制化される。
 政府発表によると、税収増のため50万ユーロを上回る所得に3%の特別税を課すとともに、VATを現行の20%から21%に引き上げる。歳出減を狙い、年金の給付開始年齢も一部引き上げ、自治体財政の効率化を進める。
 伊政府は7月、14年までに財政収支を均衡させる財政再建計画を策定、上下両院で承認されている。だがその後、国債利回りが一段と上昇したため、新たな計画の策定を迫られることになった。
 ローマなどイタリア各地では6日、新しい財政再建計画の撤回を求める大規模なゼネストが起き、公共交通機関などが混乱。こうした反対運動が一段と激化すれば、野党が態度を硬化させて国会審議に影響が出る可能性もある。
 イタリアをはじめとする欧州諸国の財政問題は、9日からフランスのマルセイユで開かれる主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でも主要議題となる見通しだ。

G7、欧州危機封じ焦点…9日から仏で開催

[2011年9月7日 読売新聞]

「ギリシャ」再燃 日本は円高是正訴え

 9〜10日に仏マルセイユで開かれる先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、欧州の財政危機の再燃と拡大を封じ込めるため、各国が協調できるかどうかが最大の焦点となる。(小林泰明、ロンドン 中沢謙介)

 安住財務相は超円高の是正を訴える方針だが、米欧景気の先行き不安は色濃く、円高基調を反転させるのは容易ではない。

◆負の連鎖

 安住財務相は6日の閣議後の記者会見で、欧州経済の現状について「負の連鎖が欧州全体に不安定な状況をもたらしている」と述べ、欧州の財政危機と信用不安が会議の主要議題になるとの見通しを示した。
 欧州危機は、国際通貨基金(IMF)などが2日、ギリシャが当面必要とする80億ユーロ(8600億円)の融資に向けた審査を中断したことが契機となって再燃した。ギリシャは「交渉が決裂したわけではない」(ベニゼロス財務相)と反論しているが、市場ではギリシャが債務不履行(デフォルト)に陥るとの見方が広がり、10年物国債の流通利回りは、ユーロ導入後で最高となる年20%近くに急騰(国債価格は急落)した。
 影響はギリシャにとどまらず、イタリア国債の流通利回りも5%台半ばに再び上昇した。伊政府が財政再建策として掲げた富裕層への課税強化を撤回したことで財政不安が再燃した。ドイツは2%程度で推移しているのと対照的だ。
 ユーロ圏の国債を多く持つ欧州金融機関の信用不安も浮上し、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の3か月物ドル金利は約1年ぶりの高水準に上昇した。
 日米は伊政府に財政再建を促すと同時に、独仏などにギリシャ支援の確実な実行を求める意向だ。会議では信用不安を阻止するため、各国がドルを中心に大量の資金供給を続けることで協調を確認するとみられる。

◆超円高

 欧州危機の再燃で、6日の東京外国為替市場で円は対ユーロで一時、半年ぶりに1ユーロ=107円台に急伸した。米経済も失業率が高止まりするなど先行き懸念が強く、ドル売り圧力は強い。
 安住財務相は、超円高が東日本大震災から回復途上にある日本経済に与える悪影響を説明し、行き過ぎた円高に対しては円売りの市場介入も辞さない方針に理解を求める考えだ。また、財政再建は日米欧に共通した課題となっている。安住財務相は税・社会保障一体改革のこれまでの議論と実現に向けたシナリオも説明する見通しだ。

ポルトガル:法人税・富裕層増税の計画発表――赤字削減目標達成に向け

[更新日時: 2011/09/01 06:57 JST]

 8月31日(ブルームバーグ):ポルトガルは、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)から780億ユーロ(約8兆5900億円)の金融支援を受ける条件として公約した財政赤字削減目標の達成に向け、キャピタルゲイン税の税率を引き上げるほか、企業と富裕層への課税を強化する。同国は2年間のマイナス成長に備えている。
 政府は年間利益が150万ユーロを超える企業に3%、富裕層に2.5%の付加税を課すことにより、年間約1億ユーロの税収を見込む。キャピタルゲイン税の税率も1ポイント引き上げ21%とする。ガスパル財務相が31日、リスボンで政府の4年間の予算計画を公表した。
  ガスパル財務相はこの増税が、財政赤字の国内総生産(GDP)比率を今年の5.9%から、2013年にEUが求める3%以内に引き下げ、さらに15年には0.5%にするのに寄与するだろうと述べた。同国の経済成長率は今年がマイナス2.2%、来年がマイナス1.8%にとどまった後、13年にプラス1.2%に改善すると見込まれ、こうした中でも政府は赤字削減に取り組むと同相は語った。

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作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

5件のコメント

  1.  固定資産税、都市計画税でさえヒィヒィの私がぜひ知りたいのが、日本で富裕税3%実現したらどのくらいの税収になるかということです。

  2. GOROPAPAさん、こんにちは。

    国税庁の「申告所得税標本調査」(2009年分)の「統計表」第1表によれば、所得階層5,000万円以上の人は40,795人、この人たちの課税所得額の合計は4兆3,114億円です。したがって、ここに3%の特別課税をすると、税収は約1,293億円増えるという計算になります。

    ちなみに全所得階層でみると、納税者717万6,061人で35兆3,864億円の所得。ここからさまざまな控除を引いて、課税所得は26兆1,152億円。そして、これにたいする所得税額は源泉徴収分を含めて4兆5,395億円です。控除前の所得合計額にたいする所得税の割合は12.8%になります。

  3.  GAKUさん、丁寧なレスありがとうございました。
     「所得階層5000万円以上の人って意外に少ないね」と大学生の長女。「仮に富裕税制ができても1293億円か」と同じく大学生の長男。とまぁ、家族のネタにさせてもらいました。
     その後話が弾んだのは、究極の大衆課税=消費税のこと。
     消費税は1%=2兆円とその仕掛けといい、金額といい桁違いなんですね。富裕税について話し合っていたら消費税の恐ろしさに気づきました。

  4. GOROPAPAさん

    > 「所得階層5000万円以上の人って意外に少ないね」と大学生の長女。

    これはあくまで「確定申告」した人の数です。株式の配当益や譲渡益については、特別の「源泉徴収口座」を設けて取引する場合には、何千万円、何億円の儲けがあっても、10%の源泉徴収だけで申告する必要がありません。

    もともとの制度では、源泉徴収の場合には税率が20%になって、所得申告した方が税率が低くなることになっていたのですが、現在はこの税率が10%に軽減されているので、申告しないほうが得、ということになっています。そのため、株取引をやっていて、申告しない人というのはかなりいるのではないでしょうか(直接、それを裏付けるデータを私は持っていませんが)

    いずれにせよ、株取引で大もうけしたような人でも、「申告所得課税標本調査」には含まれない場合がある、ということだけはお忘れなきように。

  5. GOROPAPA さんへ

    ちょっと古いデータですが、2006年に野村総研が推計したところによると、5億円以上の金融資産を持つ超富裕層は5万2000世帯、その金融資産の合計は46兆円になるそうです。

    いまかりに、これらの金融資産から毎年10%の配当利益があるとすると、それだけで毎年4兆6000億円の収入になります。これに株配当・株譲渡益の本来税率である20%の課税をおこなったとすれば、それだけで毎年1兆円近く(9200億円)の税収が得られる計算になります。

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