本当は「謝罪」していなかった安倍首相

従軍慰安婦問題で、訪米した安倍首相がブッシュ大統領にたいして「謝罪」した報道されているが、実は、安倍首相は「謝罪」は表明しなかった。そんな仕掛けを、毎日新聞の金子秀敏・専門編集委員が紹介している。

その仕掛けはこうだ。

安倍首相は、「慰安婦の方々が非常に困難な状況で辛酸をなめられたことに対して、人間として、首相として、心から同情し、申し訳ないと思う」と述べたのだが、この「申し訳なく思う」というくだりが、アメリカでは「マイ・アポロジーズ」と翻訳されて、ホワイトハウスのホームページに載っている、というのだ。

金子氏が指摘するように、「申し訳ないと思う」というのは「感想」であって「謝罪」ではない。それが、英語では、最大級の謝罪表明にすりかえられる。まさに、「通訳のマジック」だが、こんな目くらましにごまかされる訳にはいかない。

早い話が:ホームページにない(毎日新聞)

早い話が:ホームページにない=金子秀敏
[毎日新聞 2007年5月10日 東京夕刊]

 首相官邸のホームページに安倍晋三首相の活躍を紹介する「総理の動き」がある。
 4月26、27日の訪米は記事のタイトルが「米国・中東諸国訪問(米国)」。会談概要や共同声明などの文書、内外記者会見の一問一答が載っている。
 だが、この内外記者会見は少し奇妙だ。訪米のハイライトは、キャンプデービッドで行われたブッシュ大統領との首脳会談だった。会談後、大統領といっしょにやった内外記者会見はテレビ中継された。ところが、ホームページに載っているのは、エジプトでの総括会見だけなのだ。
 なぜキャンプデービッドの記者会見を載せないのか。この記者会見では「慰安婦問題」への「謝罪」が注目された。その記録を残したくなかったからか。ホワイトハウスのホームページは、会見全文を載せている。
 あの時、首相は「慰安婦の方々が非常に困難な状況で辛酸をなめられたことに対し、人間として、首相として、心から同情し、申し訳ない思いだ」と言った。英文の記録によると、日本語の「申し訳ない思い」は、「リグレット(遺憾)」ではなく、もっと重い「マイ・アポロジーズ(謝罪)」と訳されている。だから大統領は「首相のアポロジーを受け入れる」と応じた。
 「申し訳ない思い」は、感想であって「謝罪」の行為ではない。だが、大統領も記者たちも、「謝罪」だと理解した。あうんの呼吸である。
 米国議会では、従軍慰安婦に謝罪するよう要求する決議案が準備されている。そんな中で「シンゾーはちゃんと謝ってるよ」と、ジョージが助け舟を出した。それには首相の謝罪が前提になる。首相は「申し訳ない思い」としか言わないが、大統領は謝罪と受け取るという通訳のマジックを利用して、慰安婦問題を封じ込めたのである。
 だが、このやりとりをホームページで宣伝しようとしない。首相はあとになって「米国に謝罪したわけではない」と不満をもらしているという。謝罪は避けたのに、謝罪したという評価が定着し、不本意なのだろう。
 首相は、米議会でも慰安婦問題で同様の説明をした。外電によると、議員のスタッフが集まって談話を分析した。「本当の謝罪ではなく、河野談話より後退した」という結論だった。謝罪したと思ってほしい米議会人は、謝罪と受け取っていない。ままならないものだ。(専門編集委員)

↓ホワイトハウスのホームページで紹介された、キャンプデービッドでのブッシュ大統領と安倍首相の記者会見はこちら。
President Bush and Prime Minister Abe of Japan Participate in a Joint Press Availability

従軍慰安婦への「謝罪」にかんするくだりは、以下のとおり。

PRIME MINISTER ABE: Well, in my meeting with the congressional representatives yesterday, I explained my thoughts, and that is I do have deep-hearted sympathies that my people had to serve as comfort women, were placed in extreme hardships, and had to suffer that sacrifice; and that I, as Prime Minister of Japan, expressed my apologizes, and also expressed my apologizes for the fact that they were placed in that sort of circumstance.

直訳するとこうなる。

昨日アメリカ議会の代表と会ったとき、私は、自分の考えを表明した。すなわち、私は、慰安婦として働かざるをえなかった人々が非常に困難な状況におかれたこと、そして犠牲を受けざるをえなかったことにたいして、深い心からの同情をもつ。そして、私は、日本の総理大臣として、彼女たちがそのような状況に置かれたという事実にたいして、謝罪を表明した。

ところが、同じ記者会見が日本のメディアでは、こんなふうに伝えられている。これは毎日新聞だけでなく、産経新聞も同じように報道しており、安倍首相自身が「謝罪を表明した」とは発言していないことは間違いない。

↓日本で報道された同記者会見の要旨(毎日新聞)
日米首脳会談(その1) 同盟強化、「世界」を意識(毎日新聞)

 首相 慰安婦の方々が非常に困難な状況で辛酸をなめられたことに対し人間として首相として心から同情し、申し訳ない思いだ。

↓同じく産経新聞の報道。

首相訪米、苦い教訓 慰安婦問題は意図伝わらず(産経新聞)

 首相は、大統領との共同記者会見で、慰安婦問題についてこう語った。
 「慰安婦の方々に、人間として、また首相として心から同情しているし、そういう状況に置かれていたことに対して申し訳ない思いだ」
 「20世紀は、人権があらゆる地域で侵害もされた時代でもあった。21世紀を人権侵害のない素晴らしい世紀としていきたい」
 それに先立つ米議会幹部との会談でも、ほぼ同じことを述べ、訪米前の日本テレビや米CNNテレビのインタビューでも同じ言い回しを使った。

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