テロ対策か、単なる気休めか、新たな監視社会の出現か…

新しい入国審査で指紋採取と顔写真撮影を義務化。

僕は、海外旅行したことがなく、パスポートさえもっていないので、入国審査といわれてもピンと来ませんが。しかし、こんなことをやっているのはアメリカと日本だけ。はたして、それでどんな効果があるんでしょうか?

『テロ対策』掲げ新入国審査始動 指紋採取など義務化(東京新聞)

『テロ対策』掲げ新入国審査始動 指紋採取など義務化
[東京新聞 2007年11月20日 夕刊]

 十六歳以上の外国人を対象に、入国時に指紋提供や顔写真の撮影を義務づける新たな審査制度が二十日、全国の空港や海港で一斉に始まった。 
 入国時に生体情報を採取する制度の導入は「テロリストの入国阻止」を目的に二〇〇四年から始めた米国に続く二例目。政府は目的としてテロ対策を掲げているが、日弁連や国内外の人権団体は「犯罪捜査に際限なく流用される恐れがあり、重大なプライバシー侵害」だとして見直しを求めている。
 採取された生体情報は過去に強制退去処分を受けた外国人のほか、国際刑事警察機構や日本の警察による指名手配者など約八十万件の生体情報のデータベースとその場で照合される。在日韓国・朝鮮人ら特別永住者、外交官、国の招待者は指紋採取などの対象外。
 成田空港では同日、日本人や特別永住者らが事前に指紋を登録し、指紋照合だけで出入国できる「自動化ゲート」の運用も始まった。

しかし、本家アメリカでは、照合リストの3分の1に誤りがあって、無関係の人間がテロリストにされる事件も起きています。

監視リスト38%に誤り、無実の人の名も 先行する米国では
[朝日新聞 2007年11月19日]

……(前略)……
「US-VISIT」は04年に導入された。仕組みは日本とほぼ同じだ。米国土安全保障省のアンナ・ヒンケン氏は「制度が始まってから危険と見なされた2千人以上の入国を拒否した」と自賛する。
 だが、肝心の技術と信頼性に、同じ政府機関から疑問符が付けられた。
 「情報管理に関して重大な脆弱性がある」。米会計検査院が同制度について、相勧告したのは7月。セキュリティー対策が不十分なために諮問を含む個人情報が、外部の人間に改変されたり、コピーされたりする恐れがある、というのだ。
 9月には「ブラックリスト」のずさんさを司法省の監査官が報告した。テロと関係ある人物を集めた「監視リスト」からサンプルを抜き出したところ38%から誤りや矛盾が見つかったという。テロ容疑者が抜け落ちていたり、無実の人物が加えられていたりした。
 監視リストはFBIや運輸保安局など複数の政府機関のリストを統合したもので、一般には非公開だ。今年4月辞典で70万人が登録されており、1カ月2万人のペースで増加しているという。
 「そもそも、そんなにテロリストがいるはずがない。リストが信頼できない上に気密だとして詳細が公表されないため、テロ防止効果を確かめようがない」。米自由人権協会のバリー・スタインバード氏は指摘する。
 監視リストは市民生活にも影響を及ぼしている。テロとは無関係の市民がリストに載ったり、特定の名前と同姓同名の市民が市民が空港の保安検査場で止められたりする事態が、現実に起きている。
 またこのシステムは、旅行者の印象を悪化させかねない。
 米国の対外イメージを高める目的につくられた団体が昨年、海外からの旅行者を調査した。「入管職員の対応や入国に必要な書類に関して、もっとも友好的でない国・地域は?」との問いに、米国と答えた人が最も多かった。団体は「旅行者は米国が彼らを歓迎せず、障壁を設けていると感じている」と分析する。

日本の場合は逆に、保有するリストが少なすぎて、効果がないと言われています。(ま、リストが少なすぎたら、鳩山邦夫法務大臣を載せておく、という手がありますが…。なんせ、「友人の友人がアルカイダ」というのですから。)

 入管のテロリスト関係者リストは、国連や国際刑事警察機構(ICPO)の情報などに基づくが、保有する指紋データは「ささやかな規模」と法務省関係者。「一番大きいのは心理的な抑止効果」といい、テロリストの発見には懐疑的な反応。(「東京新聞」11月20日付夕刊、10面)

また、こんな声もあります。

 「そこまで管理されるのは気持ちいいものじゃないし、かえってアメリカ並みに危ないのかと不安になる。日本のイメージも悪くなるのでは」(「朝日新聞」11月20日夕刊、15面)

「日本人が韓国で同じことをされたら嫌な気持ちになるだろう」(同前)というコメントもありますが、それだけでなく、もしどこかの国で同じような審査システムが導入されて、誰か日本人が「テロリスト関係者」として拘束されたら、日本政府はどうするつもりでしょうか? そのとき、日本で同じことをやっている以上、不当だと抗議することもできないし、身請けしようものなら、日本全体が「テロ支援国家」になってしまいます。だからといって、邦人が海外で不当に人権侵害を受けているのを笑って見すごすなどということは、およそ主権国家の名に値しません。

効果があるとしたら、偽造パスポートで一度国外退去させられた人間の再入国が難しくなるぐらい。そのために、日本にやってくる全外国人に指紋押捺を強いる必要があるのか。コスト的な問題もあるけれども、そもそも、あらかじめ全員を犯罪者である可能性のある集団とみなして、そこから指紋チェックで安全な人間だけを選り分ける、という発想が非人間的。

あらかじめ指紋を登録しておけば指紋照合だけで入国できる「自動化ゲート」がつくられるというのも、一見便利なようだけれども、将来、全部「自動化ゲート」にされたら、それこそ海外旅行したければ全員指紋登録せよ、ということになります。

指紋によって「安全な人間」と「要注意人物」に自動的に分別される社会――さぞかし、「安全」で「危険のない」「すばらしい」社会になることでしょう。

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  1. 村野瀬玲奈の秘書課広報室 - trackback on 2007/11/23 at 22:37:12

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