男系論の時代錯誤

女系も認めるという皇室典範の改正をめぐって、「日本会議国会議員懇談会」が反対を決議。

「男系による皇位継承の伝統を根本的に改変する」というけれど、現在の憲法になって、天皇の地位は根本的に変わったことをお忘れのようです。現行憲法の成立によって、男系男子による「万世一系」の皇統という「伝統」は否定され、天皇の地位は、あくまで「国民の総意」によるものとなったのです。「国民の総意」以外のもの――男系男子による「血統」などを持ちだして、天皇の地位を正当化しようという人たちは、まず日本国憲法を勉強し直してください。

皇室典範改正案の成立不透明 超党派議連が反対決議(北海道新聞)

皇室典範改正案の成立不透明 超党派議連が反対決議
[北海道新聞 2006/01/27 07:45]

 政府が今国会での成立を目指す皇室典範改正案の行方に不透明感が広がってきた。女性・女系天皇を容認する改正内容に対して超党派の保守系議員連盟が26日反対決議を行ったほか、自民党の派閥総会でも慎重・反対論が相次いだ。ライブドア事件などで小泉純一郎政権に逆風が吹く中で、自民党執行部からも成立を危ぶむ声が出ている。
 自民党を離党した平沼赳夫元経済産業相が会長を務める「日本会議国会議員懇談会」は26日、「拙速な国会提出に反対する」との決議を採択した。総会には自民、民主両党などから44人が出席。決議では女性・女系天皇の容認について、「男系による皇位継承の伝統を根本的に改変するものだ」と男系維持を主張し、「法案を強引に上程すれば、国論は分裂し、結果として日本国と日本国民の統合である天皇の存在の意義を損なう恐れがある」と指摘している。
 同懇談会幹部には島村宜伸元農水相、中曽根弘文元文相ら伊吹派の有力議員が名を連ねているが、同派の伊吹文明会長も派閥総会で「改正は野党ともかなり話さなければいけないし、少し落ち着いてやったらいい」と述べ、与野党で議論を深めるべきだとの考えを示した。山崎派総会でも「ドタバタとした政治論争にすべきではない」と拙速を戒める声が出た。
 久間章生総務会長は記者団に「今国会でなくてはいけない必然性はない」と述べ、今国会成立にこだわらないとの考えをあらためて示すなど、執行部にも「今後の展開は予断を許さない」(細田博之国対委員長)との認識が浸透している。

なお、巷には、「男系男子による皇位継承」ということで神武天皇以来のY染色体を受け継いでいる、などという珍論を展開している輩がいますが、神武天皇は想像上の天皇であり、想像上の人物の遺伝子を受け継ぐことなど不可能です。また、途中で「臣籍降下」した皇統男子もいる以上、その子孫も立派に「神武天皇以来」のY染色体を受け継いでいます。仮に、1世代ごとに2人の男子が産まれたとすると、125代のうちに、Y染色体を受け継ぐ男子は2の125乗になります。2の10乗でおよそ1000(正確には1024)。したがって2の10乗の10乗(つまり2の100乗)で100万人。2の1000乗だと、100万×1000=10億で、かるく日本の総人口を超えてしまいます。そのうち、半分が途中で男系の血統が途絶えたとしても、約5億人ということで、Y染色体を受け継ぐ、などという議論が、いかに荒唐無稽なアンポンタンな議論であることがお分かりいただけると思います。

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

6件のコメント

  1. 憲法を論拠に持ち出すのはそもそも間違いでしょう。
    憲法が出来る前から天皇は存在しているのですから。
    寧ろ、天皇の存在を明文化したのが憲法であって、憲法に合わせるというのは本末転倒です。
    さらに、「毎世代男子が2人生まれたと仮定すると約5億人」というのもナンセンスですね。
    女系(双系)容認の方が仮定するまでもなく(最近帰化したとかじゃない限り)日本人のほぼ全員が何れかの時代の天皇の子孫なのは確実ですから。
    (男系であれば先祖を辿るラインはただ1本に限定されるので継承者は限定される)

  2. Qajinさんへ
    どうも基本的なことをご理解いただけなかったようですね。
    明治憲法では「万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」「天皇ハ神聖ニシテ犯スベカラズ」だったのです。それが戦後の憲法によって180度転換したのです。天皇の地位に同一人物がついていたとしても、天皇の地位の由来は、まったく変わったのです。
    そして、いまそのまったく変わった憲法の下で、皇室典範の議論をしているのです。その時に、「憲法を論拠にもちだすのは間違い」「憲法より前から天皇は存在している」ということの方が、そもそも間違いだと言うことが、現在の議論には忘却されている、ということを私は主張しただけのことです。
    天皇の存在がどういうふうに憲法に明文化されているか、まず確認することから議論を始めるべきで、いちど断絶したはずの「伝統」を持ちだして憲法をそれに合わせるということこそ本末転倒です。

    「男系であれば先祖を辿るラインはただ1本」でしょうが、先祖の方から見れば、男系で辿るラインは何本もあります。そういうことさえ気づかない議論の方こそ、ナンセンスではありませんか?

  3. 「男系」という言葉はそもそも先祖を辿るラインなんですけどね…
    まぁ、それは置いといて、女系容認が如何にナンセンスか示しましょう。
    「毎世代2人男子が誕生したと仮定すれば子孫は5億」と仰ってますが
    男女の出生確率はほぼ半分ですから 男子2人が確実な為には毎世代4人は生まれなければなりません。
    (こんな仮定の仕方をする時点でかなりナンセンスですが)
    「毎世代(性別を問わず)2人誕生」までは仮定するとして、男系で残る人数を計算すると
    2(出生数)×1/2(男子の確率)=1(男子期待数) となり この1人が次の世代の親となって また2人誕生し…というサイクルが繰り返されるので
    2人誕生の条件では何世代経っても男子期待数は1のままで増えも減りもしません
    これに対し、女系容認し双系となった場合を同条件で考えると、誕生した2人は性別によらずどちらも宮家となり後継者となるので文字通り鼠算式に後継者は増え貴方の言う5億とか10億という数が出てくる事になります。
    …ナンセンスですね?
    つまり、貴方は本来女系容認のナンセンスさを示す数を男女の出生確率という数を無視し隠蔽する事であたかも男系の方がナンセンスであると結果のすり替えを行っています。
    意図してやっているのならミスリードの点ではセンスありと言えなくもないかもしれませんがちゃんと計算できる人は誤魔化せませんよ。

  4. Qajinさんへ

    問題は、想像上の人物で存在するはずのない「神武天皇」のY染色体が、現在の天皇家のみに継承されているという議論です。
    歴史上、臣籍降下した皇統男子は何人もいたし、その男系男子の血統にも当然「神武天皇」のY染色体は受け継がれています。それは、過去に何回も、何世代にもわたって起きているので、日本人の相当人数が理論上「神武天皇」のY染色体を受け継いでいるはずです。だから、現在の天皇家のみが「神武天皇」のY染色体を受け継いでいるという議論は、まったくデタラメなのです。

  5. …「現在の天皇家だけがY染色体を受け継ぐ」なんて誰が言ってるでしょう?
    上で書いた論理は貴方自身が出した「毎世代2人誕生した場合」の論(に男女出生率を考慮した場合)ですが。
    そもそも 貴方の仮定の「毎世代男子が2人」で子孫が残っていく為には女子も同数(以上)生まれねば成らず、その時点で貴方は
    「人口が4のn乗で増加」を仮定しています。
    そして、「結果が10億->現実の人口を超えてる->男系なんてナンセンス」と結論付けていますが、
    仮定法で結果がおかしい時に否定されるのは仮定した条件(か計算方法)であって、男系という概念じゃないでしょう
    父親から息子へとY染色体が受け継がれるという生物学的事実は計算で否定しようがありませんし。
    因みに、仮定条件も計算も間違ってますよ
    条件は上に書いた通り「人口が4のn乗」で考えてしまっているので 4^100=約1.6*10^60という世界の人口どころか宇宙の星の数のような場合を想定してしまってますし、
    そもそも 2^100=1024^10=126穣7650杼6002垓2822京9401兆4967億0320万5376
    です。1000の2乗じゃないですよ?
    (PCの電卓で計算してみて下さい)
    「半分が途中で男系の血統が途絶えたとしても」という計算もNG
    単純に2で割るのは 男子子孫数を求めてるだけです。(男女で半分こしている)
    男”系”子孫は 途中のラインに1人でも女親が来ては駄目なので
    毎世代1/2となり「毎世代2人誕生」の条件と相殺しあって1人となります。
    実際は 途中男子が多く誕生し傍系(宮家)がいくつか出来た時代もあったからもう少し増えてますが、それでも恐らく数千?良くて万に届くかどうか、といったオーダーでしょう。
    「それでも十分多いじゃないか」というなら、そもそも有識者会議の言っている「女系容認」とは実際は「男系+女系の双系」であり、子孫全てが対象となるので日本人一億人全て後継者足り得るという論理になる事がお分かりになっていないのではないかと。
    (一億と万じゃ桁が4つ程も違うんですがね…)
    …そもそも、男系男子がいないから(実際は居ますが)改正論議になっているのに「数が多い」と唱えて女系容認をいうのは矛盾してませんか…?

  6. Qajinさんへ

    >…「現在の天皇家だけがY染色体を受け継ぐ」なんて誰が言ってるでしょう?

    知らないというのは強いことですね。(^^;)
    たとえば男系男子論をメディアなどで繰り返し主張している論客の1人、八木秀次氏は、「有識者会議」でも堂々とY染色体論を展開しています。(同趣旨の本も出しています)

    >実際は 途中男子が多く誕生し傍系(宮家)がいくつか出来た時代もあったからもう少し増えてますが、それでも恐らく数千?良くて万に届くかどうか、といったオーダーでしょう。

    お、数千から万の範囲ではあれ、僕が主張していたように、「神武天皇」のY染色体を受け継いでいる男子が現在の皇族男子以外にもいることを認めていただいたようですね。それさえ認めていただければ、仮定に基づく計算は十分用が足りたことになります。

    女系を認めたら皇族の総人数が増えすぎるという問題は、一定の条件で皇籍離脱を認めることで解決可能です。
    それは、これまでもそうやられてきたことです。戦後は、男系男子が足りないぐらいだったので男系男子の皇籍離脱が議論されたことはありませんが、皇室典範では、皇太子以外の内親王や王も「特別の事由」がある場合は皇籍を離脱することができるようになっています(第11条)。皇族が多くなりすぎた場合は、この条項にもとづいて、一定親等以上離れた王が皇籍を離脱することで、皇族の人数を一定の範囲内におさえればよいのです。
    女系を認めるということになった場合には、現在は女子が結婚したときには自動的に皇籍を離れることになっているのを改めることが必要になりますが、皇族が多くなりすぎた場合には王・女王を皇籍離脱させるというのは同じです。何の問題も生じません。

    なお、たとえば日本人1億人すべてが「日本国の統合の象徴」になりうるということになったとしても、そこに何の問題もないと思います。その中からどうやって1人を選ぶかという問題はありますが、国民全体が象徴になりうるとしたら、その方が、主権在民の日本にふさわしいあり方だと思います。まあ、一番いいのは、特別の血統、家族の個人にだけ「象徴」の地位を認めるというやり方自体をやめてしまうことですが。

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