安倍首相、A級戦犯の戦争責任を認めず

安倍首相が、A級戦犯の戦争責任について、「断定するのは適当ではない」として、これを認めない立場を明言。

A級戦犯の戦争責任、政府断定は不適当…首相答弁(読売新聞)

なにせこの人は、「満州は攻め入ってつくったわけではない」 ((いまさら言うまでもないが、「満州国」は、1931年9月18日夜、日本軍(関東軍)が南満州鉄道を爆破し、これを中国軍の仕業だとして軍事行動を起こし、一挙に満州全域を占領し、翌32年3月、清朝廃帝・溥儀を「執政」としてつくりあげられたもの。日本軍が満州各地を攻撃して占領したことは、当時の新聞にも書いてあることです。))、「満州の権益は、第1次大戦で日本がドイツの権益を譲り受けた」 ((「満州の権益はドイツの権益を譲り受けたものだ」というのは、まったくのデタラメ。第1次世界大戦後、日本が獲得した旧ドイツ権益は山東半島のもの。ドイツは満州に権益は持っていなかったので、日本が譲り受けることなど不可能。この世迷い言は、安倍氏が歴史をまともに勉強したことがないことを証明するもの。))と、テレビの前で堂々と発言した ((2005年7月31日のサンデープロジェクトでの日本共産党の志位委員長との対論))人ですから。

A級戦犯の戦争責任、政府断定は不適当…首相答弁
[2006年10月2日21時16分 読売新聞]

 安倍首相は2日午後の衆院本会議で、首相就任後初の各党代表質問に対する答弁を行った。
 首相は、昭和戦争に関するA級戦犯の戦争責任について「先の大戦(昭和戦争)に対する責任の主体については、さまざまな議論がある。政府として具体的に断定することは適当ではない」との見解を示した。
 連合国がA級戦犯を裁いた極東国際軍事裁判(東京裁判)については、「我が国はサンフランシスコ講和条約により、裁判を受諾しており、国と国との関係において、この裁判に異議を述べる立場にはない」と語った。
 また、昭和戦争に対する歴史認識として、1995年の村山首相談話などを引用する形で「我が国は植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけ、アジア諸国の人々に対し、多大の損害と苦痛を与えた」と説明した。
 自らの靖国神社参拝については、「私が行った、行かない、あるいは参拝したか、しないかについて宣明するつもりはない」と述べ、参拝の有無を明らかにする考えはないことを重ねて強調した。
 所信表明演説に盛り込んだ集団的自衛権行使の事例研究については、「政府としては、これまでの憲法解釈や、国会の議論の積み重ねを十分に尊重しつつ、よく研究していく」と述べた。
 一方、先の通常国会からの継続審議となっている社会保険庁改革関連法案に関連し、「(社保庁の新組織を)すべて公務員でやらなければならないかどうかということを含めて国会で十分議論してもらう」との考えを示した。
 民主党の鳩山幹事長、松本政調会長、自民党の中川幹事長の質問に答えた。

彼の答弁は支離滅裂。A級戦犯の責任は否定しながら、他方で、東京裁判については「異議を述べる立場にない」といい、さらに、村山談話を踏襲して日本の「植民地支配と侵略」は認める。ならば、アジア諸国に「多大な損害と苦痛」を与えた責任はどこにあるのか? ある刑事事件で、裁判で有罪とされた人間が事件の責任を否定するとしたら、それはその人間が「自分は悪いことはしていない。冤罪だ」と言っているのと同じこと。そんな言い逃れが通用すると思っているのだろうか?

追記:
愛媛新聞、毎日新聞などが、10/3付社説で、同じように安倍首相の答弁を批判しています。

社説:衆院代表質問 あいまい戦術をいつまで通す(愛媛新聞)

社説:衆院代表質問 あいまい戦術をいつまで通す
[愛媛新聞 2006/10/03]

 安倍流の「あいまい戦術」をどこまで貫くのだろうか。
 安倍晋三首相の所信表明演説に対する代表質問が始まり、きのうは衆院で民主党と自民党の計三人が登壇した。
 首相となって初の国会論戦で、キャッチフレーズ先行といわれた所信表明にどう肉付けするのか、大いに注目された。
 まず関心を引いたのは、A級戦犯の戦争責任について「政府として具体的に断定することは適当でない」と明言を避けたことだ。自民党総裁選から一貫する姿勢であり、「戦争犯罪人」とした小泉純一郎前首相の認識から後退している。
 小泉氏は靖国神社参拝によりA級戦犯合祀(ごうし)を問題視する中国や韓国との関係を悪化させた。この点、安倍氏は戦争責任をあいまいにするのと同時に、東京裁判に関しては「異議を述べる立場にない」と述べた。
 国内向けにはフリーハンドを保ちつつ、外交面では説明を使い分けて中国や韓国に批判の余地を与えず、関係改善の環境を整える。したたかな知恵といえなくもない。参拝の事実を明らかにしない、とあらためて述べたのも同じだろう。
 首相は八日に中国、九日に韓国で首脳会談に臨むという。早期に関係改善をはかろうという意欲はひとまず評価したい。
 ただし、肝心なのは会談の中身とその後の言動であって、あいまい戦術がいつまでも通用するとは考えにくい。
 加えて、歴史認識や靖国参拝は首相が思い描く国家像の根幹にかかわる。政治家が「謙虚であるべき」なのは歴史認識を語ることに対してではなく、歴史そのものに対してのはずだ。憲法問題をはらむ靖国参拝でも、事実関係さえ公表しないのは説明責任を果たしていない。(以下略)

社説:代表質問 首相は論点をはぐらかすな(毎日新聞)

社説:代表質問 首相は論点をはぐらかすな
[毎日新聞 2006年10月3日]

 安倍晋三首相の所信表明演説に対する代表質問が2日始まった。安倍政権下における初めての論戦だが、安倍首相は歴史認識や靖国参拝問題などの肝心な点に関しては、この日も明確な答弁をしなかった。小泉純一郎前首相の「ワンフレーズ」政治の下、国会の言論機能は低下したと指摘されてきた。安倍首相は小泉政治の継承を言うが、「はぐらかし」手法まで継承されては困る。(中略)
 まったく物足りなかったのは首相の歴史認識問題だ。首相は、戦前の植民地支配と侵略戦争を謝罪した95年の村山富市首相談話について、戦前にアジアでとった行為がアジア諸国の人々に困難と苦痛を与えたという談話の内容を紹介するだけにとどまり、自身はどう考えるのか自分の言葉で語ろうとしなかった。靖国神社を参拝したともしないとも言わない首相の手法についても「個人として考えることだ」と語り、それ以上の言及を避けた。
 A級戦犯の責任に関しても「先の大戦の責任の主体については、さまざまな議論があることもあり、政府として具体的に断定することは適当でない」と自身の判断を回避。政治家が歴史観を披歴すること自体も「政治家の発言は政治的、外交的に意味を持つので歴史の分析については政治家が語ることは謙虚であるべきだ」とすりかえた。
 私たちは、これらの問題に対し、あいまいさに逃げ込むなと繰り返し注文してきた。これでは「人生いろいろ」発言の小泉前首相と同様、はぐらかし答弁だと言われても仕方ないだろう。
 日中、日韓首脳会談が近く再開される見通しとなっている。首相のあいまいな態度で、中国、韓国との真の相互理解が進むのか、懸念せざるを得ない。関係改善に成算があるのかもしれないが、長期的に安定した関係を築くには明確な歴史認識が必要だろう。(以下略)

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

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